北海道の旅程はたいてい、どちらかを選ぶことになります。絵はがきの道央(富良野・美瑛・花の丘)か、本物の道東(知床・阿寒摩周・釧路のタンチョウ)か。5日間ではその選択を迫られます。7日間でも、ほぼ迫られます。
10日間は、その選択をしなくてよくなる日数です。 新千歳を起点に道央の高原を抜け、知床の玄関口とカルデラ湖まで足を伸ばし、また戻ってくる——毎日が移動日にならずに、本当の意味で島を一周できる、このサイトで扱う最短の日数です。最後に道東へ踏み込む区間こそが本題です。そこから先は、日本の他のどことも違う顔をした北海道が始まります。
このルートの総走行距離は約1,798km、10日間分。同じ骨格のまま、自分のペースと興味に合わせて組み直したい方は、旅程プランナーへ——10日間・自然と野生動物・夏という条件で最初から組んであります。
ルート全体図
新千歳 → 洞爺湖 → ニセコ → 富良野 → 美瑛 → 上士幌(十勝) → 斜里(知床の玄関口) → 弟子屈(阿寒摩周) → 釧路 → 占冠(トマム) → 札幌 → 小樽 → 函館 → 登別 → 倶知安 → 新千歳。
北海道14振興局のうち8つ(後志・胆振・上川・十勝・オホーツク・釧路・石狩・渡島)にまたがります。面積で言えばほぼ島の半分。車は札幌か、新千歳空港で借りてしまうのが正解です。富良野から先は、電車では成立しないルートです。
このルートが向く人・向かない人
これは「道央の作り込まれた美しさ(ラベンダー、パッチワークの丘、ガーデン街道)」と「道東の本物の野生(クマ、タンチョウ、カルデラ湖、道が途中で終わる場所)」の、どちらか一方では満足できない人向けのループです。どちらか片方だけでいいなら、10日間もこれだけの宿の入れ替えも必要ありません——記事の最後にある短い旅程を見てください。両方をひとつの旅で味わいたいなら、これはほぼ最小限の日数です。
1日目: 洞爺湖・ニセコ
新千歳に到着したら、南西へ洞爺湖を目指します。湖畔に活火山を従えるカルデラ湖で、湖畔の温泉旅館、夏場は毎晩花火が上がります。雲の上に浮かぶウィンザーホテルも湖を見下ろす位置に。そこからニセコへ短時間移動し宿泊——羊蹄山を正面に望む、リゾートの喧騒がない静かな側です。あえてゆるやかな初日にしています。この先の運転のために体力を残しておきましょう。約2.3時間・148km。
2日目: 富良野
北へさらに進んで富良野へ。北海道中央部の絵はがきそのもの——ファーム富田のラベンダーは7月中旬から下旬が見頃、ワインは通年。この時期は宿の予約を早めに。ラベンダーの丘は観光バスが来る前の早朝が一番きれいです。約3.2時間・206km。
3日目: 美瑛から上士幌へ
午前中は美瑛——パッチワークの丘と青い池は、できれば朝一番の光で。その後、東へ十勝の高原地帯・上士幌へ。日本最大の公共牧場ナイタイ高原、そして糠平湖の水位によって現れたり沈んだりするタウシュベツ川橋梁があります。熱気球狙いならここも押さえどころ。約2.2時間・143km。
4日目: 斜里 — 知床への扉
このルートの名前の由来になる1日です。斜里は知床——ヒグマの生息密度が日本で最も高いとされる、道路が先端の手前で終わる世界自然遺産の半島——への玄関口。知床は実質、山脈を挟んだ2つの海岸からなり、オホーツク側のウトロと根室海峡側の羅臼に分かれます。初めての知床ならウトロ側を拠点に。知床五湖の木道、日本屈指の断崖の下をゆくクルーズ、タイミングが合えばカムイワッカ湯の滝も。5日間や、多くの7日間の旅程では組み込めない、このルートだけの区間です。ここまでの運転時間に見合う価値があります。約3.4時間・223km。
5日目: 弟子屈・釧路
西へ、そして南へカルデラの国へ。弟子屈では摩周湖の異様なまでの透明度、屈斜路湖の湖畔温泉と冬の白鳥、間に硫黄山——これぞ阿寒摩周のカルデラ王国です。続いて釧路へ。炉端焼き発祥の霧深い港町で、日本最大の湿原・釧路湿原とタンチョウの本拠地でもあります。1日でまったく違う2種類の「野生」に出会えます。約2.8時間・184km。
6日目: 占冠(トマム)
西へ戻る長い移動日、占冠で一泊。トマムの雲海テラスで知られる場所です。5日間走り続けた後に、あえて早起きする価値がある景色です。約3時間・192km。
7日目: 札幌・小樽
島の中心地へ戻ります。札幌でラーメン、スープカレー、ジンギスカン——恋しかったものを。1876年からビールを造ってきた街でもあります。夜は小樽へ移動して宿泊。運河沿いのガス灯、ニシン御殿、鮨の店は、日帰り客が引いた後のほうが本番です。だからこそ札幌からの日帰りではなく、ここで一泊する意味があります。約2.8時間・184km。
8日目: 函館
南へ、日本屈指の港町函館へ。赤レンガ倉庫、坂の街並み、日本屈指と評される夜景——到着時間はこの夜景に合わせて組みたいところです。翌朝の朝市も、日帰りせず泊まる理由になります。約3.3時間・218km。
9日目: 登別・倶知安
再び北へ、地獄谷が湧かす北海道随一の名湯登別。11種類の泉質、街のあちこちに立つ鬼の像、立ちのぼる湯けむり。続いて倶知安へ。世界が「ニセコ」と呼ぶパウダーの本当の住所で、グランヒラフはここ倶知安にあり、羊蹄山を正面に望みます。冬にこの旅を繰り返すなら覚えておきたい場所ですが、夏でも羊蹄山の眺めだけで立ち寄る価値があります。約3時間・195km。
10日目: 新千歳へ
今日は新しい立ち寄り先はなく、新千歳空港への帰路のみ。約1.6時間・106km——短い行程なので、朝は倶知安で最後のコーヒーを楽しむ余裕もあります。
このルートを自分用に調整する
このループはあくまで一例で、唯一の正解ではありません。占冠の一泊を知床の二泊目に回したい、函館を削って阿寒摩周にもう1日足したい——そんな組み替えのために旅程プランナーがあります。日数・興味・季節を入力すれば、このルートではなく、あなた仕様のルートを組み立ててくれます。
余裕を持たせたいポイントは2つ。知床は天候と季節ごとの遊歩道ルールで1日の中身が変わりやすい場所で、そして移動距離の長い日(4日目・6日目・8日目)——北海道の距離感に誇張はなく、2エリア旅より移動日が多いのがグランドループの宿命です。ルート決定前のエリアの考え方や移動ロジックについては北海道旅行の組み立て方を、夏の北海道が季節ごとにどんな表情を見せるかは夏の北海道ガイドをあわせてどうぞ。
10日間取れない人へ
誰もが10日間取れるわけではなく、それで構いません。ただし今回のルートでは道東までは届きません。1週間あるなら、7日間モデルコースで道央の王道ルートと、札幌を経由しない道東オンリールートの2本を紹介しています。5日間しかない場合は、5日間モデルコースで島全体に手を広げず、道南西部1エリアに絞った正直なループを紹介しています。
10日間がこのサイトのスイートスポットである理由はシンプルです。まったく違う2つの北海道を1回の旅で見られるだけの長さがあり、それでいてドライブの修行にならずに済む短さもある。車は早めに予約し、知床には求められている2日間をきちんと渡してあげてください。
ノーザンランド北海道 編集部(札幌)
